大学進学の費用負担を軽減 奨学金と給付型支援制度の活用ガイド
大学進学の費用負担を軽減 奨学金と給付型支援制度の活用ガイド
お子様の大学進学が近づくにつれ、教育費の負担に対するご心配が大きくなっている保護者の方もいらっしゃるかと存じます。特に私立大学への進学や、自宅から離れて一人暮らしをする場合の費用は高額になりやすく、家計への影響は無視できません。
しかし、大学進学の費用を準備する方法は、貯蓄だけではありません。国や自治体、大学などが提供する様々な奨学金や給付型支援制度を活用することで、ご家庭の負担を大きく軽減できる可能性があります。
この章では、大学進学を検討する際にぜひ知っておきたい奨学金と給付型支援制度について、その種類や対象、申請方法などを具体的に解説いたします。
奨学金・給付型支援制度の全体像を理解する
大学や専門学校などの高等教育機関で学ぶ学生を経済的に支援するための制度には、主に「奨学金」と「給付型支援制度」があります。
- 奨学金: 学生本人が借り入れて、卒業後に返還する「貸与型」が一般的です。一部に返還の必要がない「給付型」もあります。
- 給付型支援制度: 原則として返還の必要がない、学費の一部免除や生活費の給付を目的とした制度です。多くの場合、家計基準や学力基準が設けられています。
これらの制度は、国が運営する「日本学生支援機構(JASSO)」によるものが最も一般的ですが、その他にも地方公共団体や民間育英団体、各大学が独自に設けているものなど、様々な種類が存在します。
高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+授業料等減免)
国が主導する「高等教育の修学支援新制度」は、学ぶ意欲があるにもかかわらず、経済的な理由で進学を断念したり、修学を続けられなくなったりすることを防ぐための制度です。これは、返還の必要がない「給付型奨学金」と「授業料・入学金の減免」をセットで提供するものです。
制度の主な内容
この制度による支援は、以下の3つの柱から成り立っています。
- 授業料・入学金の減免: 大学などに支払う授業料と入学金の一部または全額が免除されます。
- 給付型奨学金: 学生の生活費などに充てるための奨学金が支給されます。原則として返還は不要です。自宅通学か自宅外通学かによって給付額が変わります。
対象となる学生の要件
この制度を利用するためには、主に以下の二つの基準を満たす必要があります。
- 家計に関する基準: 住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が対象となります。具体的には、世帯収入や家族構成に基づいて支援区分(第I区分~第III区分)が判定され、区分に応じて支援額が決まります。
- 学力に関する基準: 高校の成績だけで判断されるわけではなく、学ぶ意欲があるか、学校のレポートなどで主体的な学習に取り組んでいるかなども評価されます。
支援額の目安
支援額は、世帯の所得状況(支援区分)、進学先の学校種別(国公立か私立か)、通学形態(自宅か自宅外か)によって異なります。
- 授業料減免: 年間の授業料について、最大で国立大学では約54万円、私立大学では約70万円が減免されます(第I区分の場合)。
- 給付型奨学金: 年間で、自宅通学の場合は約35万円、自宅外通学の場合は約88万円が支給されます(第I区分の場合)。
※ 上記は令和6年度の目安であり、今後変更される可能性があります。また、第II区分、第III区分では支援額が異なります。
申請方法と手続き
この制度を利用するには、通常、高校3年生の時に「予約採用」の申し込みを行うのが一般的です。進学後に大学を通して申し込む「在学採用」もありますが、予約採用の方が手続きがスムーズに進むことが多いです。
申請にあたっては、マイナンバーを提出し、世帯の所得や家族構成などが審査されます。高校や進学先の大学が説明会を実施したり、資料を配布したりしますので、最新の情報をご確認ください。
日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金
高等教育の修学支援新制度の対象とならない場合や、さらに経済的な支援が必要な場合は、JASSOの貸与型奨学金を検討することができます。貸与型奨学金は、卒業後に学生本人が返還する義務を負います。
第一種奨学金(無利子)
家計基準、学力基準ともに特に優れた学生が対象となる、利息がつかない奨学金です。
- 対象者: 高等教育の修学支援新制度の基準を満たさない場合でも、一定以上の学力・家計基準を満たす必要があります。
- 貸与月額: 進学先(国公立/私立)、通学形態(自宅/自宅外)によっていくつかの選択肢があります。国立自宅通学の場合は月額2万円~4.5万円、私立自宅外通学の場合は月額2万円~6.5万円などがあります。
- 返還: 卒業後、決められた期間内に、借りた総額を返還します。利息はつきません。
第二種奨学金(有利子)
第一種奨学金よりも緩やかな家計・学力基準で利用できる奨学金です。借り入れた金額に利息がつきます。
- 対象者: 第一種よりも対象者が広く、一般的な家庭でも利用しやすい傾向があります。学力基準も「平均水準以上」とされています。
- 貸与月額: 2万円~12万円の範囲で、1万円単位で自由に選択できます(一部例外あり)。私立大学医学・歯学課程は月額上限が異なります。
- 返還: 卒業後、借りた総額に利息を加えて返還します。利率は、市場金利に応じて変動または固定から選択できます。第一種に比べて返還総額が多くなる点に注意が必要です。
申請方法と手続き
貸与型奨学金も、高校3年生の時の「予約採用」と、進学後の「在学採用」があります。給付型奨学金と同時に申し込むことも可能です。学校の説明会に参加し、必要な書類を準備して申し込みます。所得証明書や学校の成績証明書などが必要になります。
その他の奨学金・支援制度
JASSOの制度以外にも、教育資金を支援する制度は多数存在します。
- 地方公共団体の奨学金: 各都道府県や市区町村が、その地域にゆかりのある学生向けに独自の奨学金制度を設けている場合があります。給付型と貸与型があり、独自の基準が設けられています。
- 大学独自の奨学金: 各大学が、入試成績優秀者向けや経済的に困難な学生向けに独自の奨学金制度を設けています。入学後に申請できるものや、入学前に予約できるものなどがあります。
- 民間の育英団体等の奨学金: 企業の財団やNPOなどが運営する奨学金です。特定の分野を専攻する学生や、特定の地域出身の学生を対象とするなど、様々な特徴があります。
これらの制度は、JASSOの奨学金と併用できる場合が多く、情報収集と早めの準備が重要です。
制度活用のためのポイントと注意点
早めの情報収集と計画
大学進学を検討し始めたら、できるだけ早く奨学金や支援制度に関する情報収集を開始しましょう。高校の進路指導の先生や、JASSOのウェブサイト、各大学の入試・学生支援に関する情報などを確認することが大切です。特に給付型奨学金や第一種奨学金は、募集人数に限りがある場合や、早い時期に手続きが必要な場合があります。
複数の制度の検討
JASSOの制度だけでなく、地方公共団体や大学独自の制度も視野に入れて検討することをお勧めします。複数の制度を組み合わせて利用することで、より手厚い支援を受けられる可能性もあります。ただし、併用が制限されている制度もありますので、それぞれの要項をよく確認してください。
貸与型奨学金の返還計画
貸与型奨学金を利用する場合、卒業後の返還義務が発生します。借り入れ額が大きくなると、卒業後の生活に影響を与える可能性も考慮しておく必要があります。将来の収入予測なども含めて、お子様とよく話し合い、無理のない返還計画を立てることが重要です。
正確な情報源の確認
制度の詳細は年度によって変更されることがあります。必ず、JASSOの公式ウェブサイトや各大学のウェブサイト、自治体の公式情報など、信頼できる情報源で最新の情報をご確認ください。不明な点があれば、高校の先生やJASSOの相談窓口、大学の担当部署に問い合わせてみましょう。
まとめ
大学進学にかかる費用は大きな負担となり得ますが、様々な奨学金や給付型支援制度が用意されています。特に返還不要な給付型支援制度は、家計の負担を直接的に軽減できる有効な手段です。
これらの制度を理解し、ご家庭の状況に合わせて適切な制度を活用することで、教育資金に関する不安を軽減し、お子様が希望する進路を選択できるようサポートすることが可能になります。早めに情報収集を開始し、計画的に準備を進めていただければ幸いです。