【高校生家庭向け】高等教育無償化(修学支援新制度)の対象者・支援内容・申請方法
高等教育の修学支援新制度とは:大学進学費用軽減の強い味方
大学への進学を控えるお子様を持つ親御様にとって、教育費の負担は大きな懸念事項の一つかと存じます。特に授業料や入学金は高額になりがちであり、その準備は家計に少なからぬ影響を与えます。
このような負担を軽減し、学ぶ意欲のある若者が経済的な理由で進学を諦めることのないように国が導入した制度の一つに、「高等教育の修学支援新制度」があります。これは、授業料・入学金の減免と、返還の必要がない給付型奨学金の支給を組み合わせた支援制度であり、「高等教育無償化」と呼ばれることもあります。
本記事では、この高等教育の修学支援新制度について、どのような支援が受けられるのか、どのような家庭が対象となるのか、そしてどのように申請を進めるのか、具体的な内容を解説してまいります。
支援の具体的な内容:授業料等減免と給付型奨学金
高等教育の修学支援新制度による支援は、以下の二つの柱から成り立っています。
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授業料・入学金の減免または免除 大学、短期大学、高等専門学校(4・5年次)、専門学校が対象となり、世帯収入に応じて授業料と入学金が減額、または免除されます。減免される金額は、学校の種類や世帯の経済状況によって異なります。私立大学よりも国公立大学の方が減免額の上限は低く設定されています。
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給付型奨学金の支給 日本学生支援機構(JASSO)が実施する給付型奨学金が支給されます。この奨学金は、学生本人の生活費などに充当することを想定しており、原則として返還の必要がありません。支給額は、世帯収入の基準と、自宅から通学するか、自宅外から通学するかによって変動します。
これらの支援を組み合わせることで、特に経済的に困難な状況にある家庭の学生が、安心して高等教育を受けることができるようになります。支援の程度は、後述する世帯収入の基準によって3段階に分かれています。
支援の対象となる家庭と学生の要件
この制度の支援を受けるためには、世帯の経済状況と学生本人の学ぶ意欲・能力に関するいくつかの要件を満たす必要があります。
1. 世帯の経済状況に関する要件
支援の対象となるのは、以下のいずれかに該当する世帯です。
- 住民税非課税世帯 住民税が課税されていない世帯が対象です。これは、概ね両親・本人・中学生の4人家族の場合で、世帯年収が約270万円未満の目安となります。
- 上記に準ずる世帯 住民税非課税世帯に準ずる世帯も対象となります。概ね両親・本人・中学生の4人家族の場合で、世帯年収が約300万円~380万円未満の目安となります。この基準に該当する場合、住民税非課税世帯の場合と比較して、支援額は2/3または1/3になります。
世帯収入や家族構成によって基準は異なりますので、文部科学省や日本学生支援機構のウェブサイトで公表されているシミュレーションツールなどを活用して、ご自身の家庭が対象となるか確認することが推奨されます。資産要件もあり、原則として生計維持者(両親など)の合計資産額が2,000万円未満である必要があります。
2. 学生本人の要件
支援を受ける学生本人は、以下の要件を満たす必要があります。
- 学ぶ意欲がある学生 入学後の学習状況を示す成績や出席率、レポートの提出状況などにより、しっかりと学習に取り組んでいると判断されることが必要です。高校での学業成績や、レポート等による学習意欲の確認が行われます。
- 進学先の学校種別 大学、短期大学、高等専門学校(4・5年次)、専門学校のいずれかに進学する学生が対象です。
これらの要件は、申請時だけでなく、進学後も継続して支援を受けるために満たし続ける必要があります。
申請方法と手続きの流れ
高等教育の修学支援新制度の申請は、原則として高校3年生の時に行います。
1. 申請の準備
- 高校で制度に関する説明会が開催される場合が多いので、積極的に参加してください。
- 制度の詳細や申請に必要な書類について、高校の先生から説明を受けます。
- マイナンバーの提出が必要となるため、事前に準備しておきます。
2. 申請の手続き
- 多くの場合、高校を通じて日本学生支援機構へ申請を行います。
- 申請書類(申込書、マイナンバー提出書、収入に関する証明書類など)を準備し、高校の案内に従って提出します。
- オンラインでの手続きとなる場合もあります。
3. 選考と結果通知
- 提出された書類に基づき、日本学生支援機構と進学先の学校で審査が行われます。
- 審査結果は、日本学生支援機構から学校を通じて、または直接本人に通知されます。
- 進学前の予約採用の場合、大学等に合格・入学した後に正式な手続きを経て支援が開始されます。
申請時期は高校によって異なりますが、多くの場合、高校3年生の春から夏にかけて予約採用の申込みが始まります。詳細なスケジュールは、お子様が通われている高校にご確認ください。
制度利用にあたっての留意点
- この制度は、原則として大学等への入学後に支援が開始されます。入学前の受験料や入学金の一部などには利用できません。入学金については、入学後に減免される形になります。
- 支援期間は、大学等の標準修業年限(4年制大学なら4年間)です。
- 毎年、継続して支援を受けるための適格認定が行われます。学業成績や出席状況などが継続要件となりますので、進学後も真面目に学習に取り組むことが重要です。
- 他の奨学金制度(貸与型など)との併用も可能ですが、給付型奨学金については併用に制限がある場合があります。詳細は日本学生支援機構にご確認ください。
まとめ:制度を理解し、教育資金計画に活かす
高等教育の修学支援新制度は、経済的な理由で大学進学を諦めることのないように設けられた重要な制度です。世帯収入や家族構成によって支援額は異なりますが、授業料・入学金の減免と給付型奨学金の支給により、教育費負担を大きく軽減できる可能性があります。
お子様が高校生であり、大学進学を検討されている場合は、この制度の対象となるかどうか、ぜひ一度確認されることをお勧めいたします。高校や日本学生支援機構のウェブサイトには詳細な情報やシミュレーションツールが公開されていますので、そちらも合わせてご参照ください。
制度を正しく理解し、ご自身の家庭の状況と照らし合わせることで、大学教育にかかる費用に対する不安を軽減し、より現実的な教育資金計画を立てる一助となることでしょう。