高校生の親が取り組む 大学進学に向けた教育資金計画の見直しと対策
はじめに
お子様が高校生になられた保護者の皆様は、数年後に控える大学進学に向けた教育費について、具体的な準備や漠然とした不安を感じていらっしゃるかもしれません。特に、現時点での教育資金の貯蓄状況や、これから必要となる費用がどの程度なのか、正確に把握できていない場合、不安は大きくなるものです。
大学の教育費は、入学金や授業料だけでなく、施設設備費、その他納付金、そして自宅外通学の場合は生活費など、多岐にわたります。これらの費用をどのように準備していくかは、ご家庭の状況によって異なりますが、計画的に取り組むことが重要です。
本記事では、高校生のお子様を持つ保護者様が、大学進学に向けた教育資金計画を今から見直し、具体的な対策を講じるためのステップについて詳しく解説いたします。
なぜ今、教育資金計画の見直しが必要なのか
大学進学まで残り数年となった高校生のご家庭にとって、この時期は教育資金計画を見直す上で非常に重要なタイミングです。これまでの貯蓄計画が順調に進んでいる方も、そうでない方も、最新の状況に合わせて計画をアップデートする必要があります。
見直しの主な目的は以下の点にあります。
- 必要な費用総額の再確認: 志望校の方向性(国公立か私立か、文系か理系か、自宅通学か一人暮らしかなど)が具体的になるにつれて、必要な教育費の概算もより正確になります。この最新情報に基づき、必要な総額を再確認します。
- 現状の把握と不足額の明確化: これまでに貯蓄してきた金額と、これから必要となる金額を比較し、具体的な不足額を把握します。
- 残り期間での対策検討: 大学入学までの限られた期間で、不足分をどのように準備するか、具体的な対策(貯蓄ペースの見直し、制度活用、ローン検討など)を検討・実行します。
この見直しを行うことで、漠然とした不安を具体的な課題へと落とし込み、実行可能な対策を見出すことができます。
大学教育費の現状と費用の目安
大学教育にかかる費用は、学校の種類(国公立・私立)、学部、通学形態(自宅・自宅外)によって大きく異なります。文部科学省や日本学生支援機構(JASSO)などの統計データから、以下のような目安が示されています。
- 国公立大学:
- 入学金: 約28万円
- 年間授業料: 約54万円
- 4年間の合計(学費のみ): 約244万円
- 私立大学(文系):
- 入学金: 約24万円
- 年間授業料+施設設備費等: 約115万円
- 4年間の合計(学費等): 約484万円
- 私立大学(理系):
- 入学金: 約26万円
- 年間授業料+施設設備費等: 約155万円
- 4年間の合計(学費等): 約646万円
(上記の金額はあくまで目安であり、学校や学部によって変動します。また、これ以外に教科書代や課外活動費などもかかります。)
さらに、自宅外から通学する場合、家賃、食費、水道光熱費、通信費などの生活費が年間約100万円~150万円程度かかることが一般的です。4年間では約400万円~600万円が学費に加えて必要となる可能性があります。
これらの情報を基に、お子様の志望する進路にある程度沿った形で、必要な教育費総額の目安を算出することが、計画見直しの第一歩となります。大学の学費に関するより詳細な情報は、[大学の学費は学部や設置者でどう違う?国公立・私立の費用を徹底比較]などの記事もご参照ください。
教育資金計画見直しの具体的なステップ
ここからは、教育資金計画を見直すための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1: 現状の教育費貯蓄額と年間支出の正確な把握
まずは、現時点で教育資金として確保できている貯蓄額を正確に把握します。学資保険、銀行預金、積立投資など、教育費のために積み立ててきた資産の合計額を確認してください。
次に、現在の収入と支出を詳細に見直し、年間でどの程度貯蓄に回せるか、あるいは回せる余地があるかを洗い出します。家計簿アプリや家計簿などで、日々の支出を記録・分類し、無駄がないかを確認することが重要です。教育費以外の支出項目も見直すことで、教育費に充てる資金を捻出できる可能性があります。家計の見直しについては、[教育費の不安解消へ 高校生家庭が取り組むべき具体的な家計見直し・節約術]などの記事も参考にしてください。
ステップ2: 必要な教育費総額の再計算
お子様の志望校や通学形態を考慮し、ステップ1で確認した大学教育費の目安を基に、必要な教育費総額を再計算します。
例: * 私立大学文系(自宅通学)を想定する場合: 学費等約484万円 + 入学後の諸経費 * 国公立大学(自宅外通学)を想定する場合: 学費等約244万円 + 生活費約400万円 = 合計約644万円 + 入学後の諸経費
受験料や入学準備費用(敷金礼金、家具家電購入費など)も別途必要となるため、これらの費用も加味して少し余裕を持った金額を設定することが望ましいです。入学準備費用については、[見落としがちな大学入学準備費用:合格発表から入学までのリアルな支出とその備え]もご参照ください。
ステップ3: 不足額の明確化
ステップ1で把握した現状の教育費貯蓄額と、ステップ2で再計算した必要な教育費総額を比較し、不足している金額を明確にします。
不足額 = 必要な教育費総額 - 現状の教育費貯蓄額
この不足額を、大学入学までの残り期間(お子様が高校卒業するまで約2~3年)でどのように準備するかが、今後の計画の焦点となります。
ステップ4: 不足額を補うための具体的な対策検討
不足額が明確になったら、それを補うための具体的な対策を複数検討します。
1. 貯蓄ペースの見直し・加速
現在の家計を見直し、さらなる節約によって貯蓄に回せる金額を増やします。例えば、固定費(通信費、保険料など)の見直しや、娯楽費・外食費の削減などが考えられます。また、ご夫婦どちらかの働き方を変える(例: パート収入を増やす)なども、収入を増やす方法として検討できるかもしれません。具体的な節約事例は前述の家計見直し記事などを参照ください。
2. 利用可能な制度の確認・活用
大学教育資金の負担を軽減するための公的な支援制度は複数あります。
- 高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金と授業料等減免): 世帯収入や資産の基準を満たす場合、授業料の減免や返還不要の給付型奨学金が受けられます。高校生のご家庭は、予約採用の申請が可能です。[【高校生家庭向け】高等教育無償化(修学支援新制度)の対象者・支援内容・申請方法]で詳細をご確認ください。
- 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金: 給付型と貸与型(第一種:無利子、第二種:有利子)があります。多くの学生が利用しており、予約採用の申し込みを高校在学中に行うことが一般的です。[大学進学の費用負担を軽減 奨学金と給付型支援制度の活用ガイド]で詳しく解説しています。
- 各大学独自の奨学金: 大学によっては、成績優秀者向けや経済的に困難な学生向けの独自の奨学金制度を設けています。志望校の情報を確認することが重要です。
- 地方公共団体や民間育英団体の奨学金: お住まいの自治体や民間の団体が実施する奨学金もあります。
これらの制度を積極的に活用することで、自己資金で準備すべき金額を減らすことが可能です。
3. 教育ローンの検討
不足額が大きい場合や、手元の資金は温存したいと考える場合、教育ローンの利用も選択肢に入ります。教育ローンには、国の教育ローン(日本政策金融公庫)と、民間の金融機関が提供する教育ローンがあります。
- 国の教育ローン: 金利が固定されており、比較的低金利です。対象となる学校の種類が多く、融資額の上限や返済期間なども決められています。
- 民間の教育ローン: 金利タイプ(固定・変動)や商品内容が多様です。無担保タイプや保証人不要タイプなど、様々な種類があります。金利や条件は金融機関によって大きく異なるため、複数の金融機関を比較検討することが重要です。
教育ローンは借入であり、将来返済していく必要があります。借入額や返済計画は慎重に検討する必要があります。[大学教育資金の捻出術:教育ローンと国の支援制度を徹底比較]などの記事も参考に、ご家庭の状況に合ったローンを選びましょう。
4. 資産運用の活用(リスク理解の上で)
すでに一定の資産がある場合、教育資金の一部をリスクの低い方法で運用することも考えられます。ただし、大学入学までの期間が短い(2~3年程度)ため、元本割れのリスクがある積極的な運用は避けるべきです。定期預金や個人向け国債など、安全性の高い金融商品を検討するか、専門家への相談を検討するにとどめるのが賢明です。
計画の実行と継続的な確認
見直した教育資金計画は、実行に移すことが最も重要です。設定した毎月の貯蓄目標額を確実に積み立てていく、節約策を継続するなど、計画に基づいた行動を実践します。
また、計画は一度立てたら終わりではありません。お子様の進路の具体的な変化(学部決定、志望校の絞り込みなど)や、ご家庭の収入・支出の変化に応じて、定期的に(半年に一度や年に一度など)計画を見直し、必要に応じて修正を行うことが大切です。これにより、常に現実的な目標をもって教育資金の準備を進めることができます。
まとめ
お子様の大学進学は、ご家庭にとって大きなライフイベントであり、教育費の準備はその中でも重要な課題の一つです。高校生という時期に、これまでの教育資金計画を見直し、必要な費用、現状の貯蓄、不足額を明確にすることは、今後の準備を進める上で非常に有効です。
ご紹介したステップ(現状把握、必要額再計算、不足額明確化、対策検討)を参考に、ご家庭に合った具体的な対策を講じてみてください。貯蓄ペースの見直し、各種支援制度の活用、教育ローンの検討など、利用できる手段は複数あります。
計画的に、そして具体的に行動することで、大学教育費への不安を軽減し、お子様の進学をしっかりと支える準備を進めることができるでしょう。本サイトには、教育資金に関する様々な情報が掲載されていますので、ぜひ他の記事も参考に、ご家庭の教育資金計画をより確かなものにしてください。