教育資金準備で避けたい5つの落とし穴と失敗しないための対策
はじめに:教育資金準備の不安と「失敗」の可能性
お子様の大学進学が現実味を帯びてくるにつれて、教育資金に対する不安は大きくなるものです。多くの方が早い段階から貯蓄や準備を始める一方で、計画の途中で思わぬ壁にぶつかったり、見込みが外れたりといった「失敗」のリスクも潜んでいます。
しかし、これらの失敗は、事前にその可能性を知り、適切な対策を講じることで避けることができます。この記事では、教育資金準備において多くの家庭が陥りやすい「落とし穴」を5つご紹介し、それぞれの落とし穴に落ちないための具体的な対策を解説します。
落とし穴1:教育資金計画が曖昧、または準備開始が遅すぎる
最も基本的ながら、多くの方が直面する問題が、いつまでにいくら必要かという具体的な目標設定が曖昧なまま、あるいは十分な時間をかけずに準備を始めてしまうことです。高校生のお子様をお持ちの場合、大学入学までの期間は限られています。漠然とした貯蓄では、必要な時期までに目標額に到達できない可能性があります。
失敗しないための対策
- 具体的な目標額を設定する: まずは、お子様が進学を希望する可能性のある大学の形態(国公立か私立か)、学部、自宅通学か一人暮らしかなどに基づき、入学金や初年度納付金、4年間の学費、さらには生活費などの目安を具体的に試算します。文部科学省や日本学生支援機構(JASSO)のデータ、各大学のウェブサイトなどを参考に正確な情報を収集します。
- 準備期間を確認し、毎月の積立額を計算する: 目標額から現在の貯蓄額を差し引き、大学入学までの期間で割ることで、毎月(あるいは毎年)いくら積み立てる必要があるかが明確になります。
- ライフプランニングツールを活用する: 将来の収支や大きな支出(住宅ローン、車の購入など)も考慮に入れたライフプラン全体の中で教育資金を位置づけることで、より現実的な計画を立てることができます。金融機関やファイナンシャルプランナーの提供するツールや相談サービスも有効です。
落とし穴2:教育費を過小評価している
大学進学にかかる費用は、学費だけではありません。受験料、入学金、教科書代、パソコン購入費、引越し費用、一人暮らしの初期費用(敷金・礼金、家具家電購入)、さらには毎月の生活費(家賃、食費、光熱費、通信費、交通費、娯楽費など)も考慮に入れる必要があります。「学費さえ貯めれば大丈夫」と考えていると、入学前や入学後に想定外の支出に慌てることになります。特に自宅外通学の場合は、学費以上に生活費の負担が大きくなることも少なくありません。
失敗しないための対策
- 学費以外の費用も正確に見積もる: 大学のウェブサイトで公開されている学費や諸費用の情報を確認するだけでなく、一人暮らしの場合の地域ごとの家賃相場や、一般的な大学生の生活費データ(日本学生支援機構の学生生活調査など)も参考に、より詳細な費用項目を洗い出し、見積もりを作成します。
- 予備費を確保する: 見積もり通りに進まない可能性や、病気、留学などの不測の事態に備え、計画額の1〜2割程度の予備費を別途確保することを検討します。
- 大学入学準備費用の内訳を確認する: 合格発表から入学までの短期間に多額の費用が必要となるため、この期間にどのような支出があるのかを事前に把握し、資金を準備しておくことが重要です。
落とし穴3:貯蓄方法が適切でない(リスク、インフレ、流動性)
教育資金は使う時期が決まっているため、リスクを取りすぎるのは適切ではありません。一方で、低金利の普通預金だけに置いておくと、インフレによって実質的な価値が目減りするリスクもあります。また、いざ必要になった時にすぐ引き出せないような商品に偏りすぎるのも問題です。
失敗しないための対策
- 複数の貯蓄・運用方法を組み合わせる: 必要となる時期が近い資金は元本保証のある安全な預貯金で準備し、まだ時間がある資金の一部は、つみたてNISAやiDeCoなどの非課税制度を活用した投資信託などで、インフレ対策や資産増加を目指すといった分散投資を検討します。
- リスクとリターンを理解する: 投資を行う場合は、元本割れのリスクがあることを十分に理解し、無理のない範囲で行います。教育資金の中でも、いつ頃いくら必要になるかという時期を考慮し、リスク許容度に応じた商品を選びます。
- 流動性を考慮する: 入学金など、確実にこの時期に必要という資金は、必要な時にすぐに引き出せる預貯金などで準備しておくことが賢明です。
落とし穴4:利用できる制度や支援策を知らない、または活用しない
国や自治体、大学などが提供する奨学金、給付型支援制度、教育ローンなど、教育費負担を軽減するための様々な制度が存在します。これらの制度の存在を知らなかったり、申請方法が分からずに利用しなかったりすることは、大きな機会損失となります。特に、返済不要の給付型奨学金や授業料減免制度などは積極的に活用を検討すべきです。
失敗しないための対策
- 公的な支援制度を詳しく調べる: 高等教育の修学支援新制度(授業料等減免+給付型奨学金)や、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金、国の教育ローン(日本政策金融公庫)など、代表的な制度について対象者、支援内容、申請時期、手続き方法などを詳しく調べます。
- 自治体や大学独自の制度を確認する: お住まいの自治体や、志望校のウェブサイトで、独自の奨学金や特待生制度、学費サポート制度がないかを確認します。大学独自の制度は、一般募集の奨学金よりも採用基準や募集時期が異なる場合があります。
- 早めに情報収集と申請準備を始める: 多くの奨学金や支援制度には申請期間が設けられています。情報収集は高校3年生になる前、あるいは始まったらすぐに開始し、必要な書類準備などを計画的に進めることが重要です。
落とし穴5:夫婦間での情報共有・認識が不足している
教育資金の準備は、夫婦共通の目標であるはずですが、どちらか一方に任せきりになっていたり、お互いが抱いている教育費に関する認識や不安が共有されていなかったりするケースが見られます。資金計画や利用する制度、さらには進学先の選択など、重要な決定において夫婦間の認識がずれていると、後々トラブルになる可能性があります。
失敗しないための対策
- 定期的に教育資金について話し合う場を持つ: 最低でも年に一度は、現在の貯蓄状況、今後の支出見込み、利用を検討している制度などについて夫婦で話し合う時間を持つようにします。
- 情報を共有し、共通理解を深める: 教育費の目安、利用できる制度の情報、貯蓄・運用方法など、収集した情報は必ず夫婦で共有し、お互いが内容を理解できるように努めます。
- 教育に関する価値観や希望を話し合う: どのような教育を受けさせたいか、進学先に対してどのような希望があるかなど、お金に関することだけでなく、教育そのものに対する価値観についても話し合うことで、より具体的な資金計画に繋がります。
まとめ:計画と情報収集、そして夫婦の協力で失敗を回避する
教育資金準備における「失敗」の多くは、計画の甘さ、情報不足、そしてコミュニケーション不足に起因します。しかし、これらの落とし穴は、決して避けることのできないものではありません。
まずは現実的な資金計画を立て、必要な情報を正確に収集する。そして、利用できる様々な制度を積極的に活用する。さらに、ご夫婦でしっかりと話し合い、共通認識を持って計画を進めることが非常に重要です。
これから大学進学を迎えるお子様のため、そしてご自身の将来のためにも、今回ご紹介した「落とし穴」を意識し、着実な教育資金準備を進めていただければ幸いです。