大学教育資金の捻出術:教育ローンと国の支援制度を徹底比較
大学進学にかかる教育資金への対策
お子様が高校生になり、いよいよ大学進学が視野に入ってくると、その教育資金について具体的な準備を考える機会が増えることと思います。特に、大学の学費は多額になることが多く、どのように資金を準備するかは、多くのご家庭にとって大きな課題となります。
これまでに、大学進学にかかる費用全体や、奨学金・給付型支援制度についてご紹介してきましたが、それだけでは必要な資金全てをまかなえない場合もあります。そのような場合に検討したいのが、教育ローンや国の教育資金に関する支援制度です。
この記事では、大学教育資金を準備するための手段として、教育ローンと国の支援制度に焦点を当て、それぞれの特徴や利用方法、そしてご家庭の状況に合わせてどのように選択・活用すれば良いのかを具体的に解説します。
教育ローンとは何か
教育ローンは、文字通り教育に関する資金のために利用できるローンです。主に学校納付金(入学金、授業料など)や、受験費用、下宿代、教科書代などに利用することができます。大きく分けて、「国の教育ローン」と「民間の教育ローン」があります。
国の教育ローン(日本政策金融公庫)
国の教育ローンは、政府系金融機関である日本政策金融公庫が取り扱う教育資金融資制度です。多くの方が最初に検討する教育ローンの一つと言えるでしょう。
- 特徴:
- 比較的低利で固定金利の場合が多いです。
- 保証人がいない場合でも、公益財団法人教育資金融資保証基金の保証を利用できます(別途保証料が必要)。
- 幅広い用途(学校納付金、受験費用、下宿代、教科書代、交通費、パソコン購入費など)に利用可能です。
- 原則として、お子様一人につき350万円以内(海外留学資金の場合は450万円以内)の融資を受けられます。
- 利用条件:
- お子様が高校、大学、短大、専修学校などに在学または進学予定であること。
- 世帯の年間収入(所得)に上限が設定されています(扶養するお子様の人数によって異なります)。例えば、お子様一人の場合は世帯年収790万円(所得600万円)以内が目安です。
- 国の教育ローンには、返済期間や据置期間など、細かな規定があります。
- 申請手続き:
- 年間を通じて、お近くの日本政策金融公庫の窓口、またはインターネットから申し込むことができます。
- 申し込みから融資までには通常2~3週間程度かかりますので、利用を検討する場合は早めに手続きを始めることが推奨されます。
民間の教育ローン
銀行、信用金庫、労働金庫、JAバンクなどの民間金融機関が提供する教育ローンです。
- 特徴:
- 金利は変動金利の場合と固定金利の場合があり、金融機関やプランによって異なります。一般的に、国の教育ローンよりも金利が高くなる傾向がありますが、審査結果によってはより有利な金利が適用されることもあります。
- 融資限度額は金融機関によって異なりますが、国の教育ローンよりも高額な設定が可能な場合があります。
- 申し込みのタイミングや融資までの期間は金融機関によって異なります。
- 利用用途は国の教育ローンと同様、教育に関する幅広い資金に充当できます。
- 利用条件:
- 原則として、安定した収入のある方(契約者となる親権者など)が対象です。
- 金融機関所定の審査があり、借入希望者の返済能力や信用状況に基づいて可否が判断されます。
- 申請手続き:
- 各金融機関の窓口やウェブサイトから申し込みます。必要書類は金融機関によって異なりますので確認が必要です。
国のその他の教育資金支援制度
教育資金に関する国の支援制度としては、先に触れた国の教育ローン以外にも、文部科学省や厚生労働省などが管轄するものがいくつか存在します。ここでは、主に経済的な支援に関わるものとして、奨学金や授業料等減免制度以外の視点から補足します。
例えば、「高等教育の修学支援新制度」は授業料減免と給付型奨学金がセットになった制度ですが、対象とならない場合や、対象でも支援額だけでは不足する場合に、国の教育ローンを併用することも可能です。また、自治体によっては独自の教育資金に関する支援制度(奨学金、助成金、融資など)を設けている場合もありますので、お住まいの自治体の情報を確認することも有用です。
ただし、大学進学費用をまかなうための「融資」という観点では、国の教育ローンと民間の教育ローンが主要な選択肢となります。
教育ローンと国の支援制度の比較検討
教育ローンと国の支援制度(ここでは主に国の教育ローンと民間の教育ローンを比較)を検討する際の主なポイントを挙げます。
| 比較項目 | 国の教育ローン(日本政策金融公庫) | 民間の教育ローン | | :--------------- | :----------------------------------------- | :----------------------------------------------- | | 金利タイプ | 低利の固定金利(変動金利も選択肢あり) | 変動金利または固定金利。金融機関により異なる。 | | 金利水準 | 一般的に民間より低い傾向 | 金融機関や審査結果により異なる。 | | 利用条件 | 世帯収入(所得)に上限あり | 安定した収入のある親権者などが対象。審査あり。 | | 融資限度額 | お子様一人につき原則350万円(一部特例あり) | 金融機関により異なるが、国のローンより高額な場合も | | 保証 | 保証基金または連帯保証人を選択可能 | 原則として保証人または保証会社の保証が必要 | | 申請手続き | 日本政策金融公庫で統一 | 各金融機関で異なる | | 融資までの期間 | 通常2~3週間程度 | 金融機関により異なる | | 用途 | 幅広い教育関連費用に利用可能 | 幅広い教育関連費用に利用可能 |
どちらを選ぶかは、ご家庭の世帯収入、希望する借入額、返済計画、利用したい時期、金利タイプに対する考え方などによって異なります。
- 国の教育ローンが適しやすいケース:
- 世帯収入が上限内に収まる場合。
- 低利で固定金利を希望する場合。
- 保証人がいない場合でも保証基金を利用したい場合。
- 民間の教育ローンが適しやすいケース:
- 国の教育ローンの世帯収入上限を超える場合。
- 国の教育ローンの融資限度額を超える資金が必要な場合。
- 特定の金融機関と取引があり、有利な条件が提示される可能性がある場合。
まずは国の教育ローンの利用条件を確認し、対象となるか、希望する借入額を満たせるかを確認することから始めるのが良いでしょう。その上で、不足分やより有利な条件を求めて民間の教育ローンを検討するというステップが考えられます。
教育ローン利用の注意点
教育ローンは必要な教育資金を確保するための有効な手段ですが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。
- 借り過ぎに注意: 必要な金額を正確に見積もり、返済可能な範囲で借り入れることが重要です。卒業後の返済は数十年に及ぶこともあります。
- 返済計画を立てる: 借入額、金利、返済期間から、毎月の返済額を具体的に把握し、完済までの計画を立てる必要があります。シミュレーションツールなどを活用するのも良いでしょう。
- 金利タイプを理解する: 変動金利は市場金利によって返済額が変わるリスクがあります。固定金利は返済額が一定で安心ですが、変動金利より初期金利が高い場合があります。それぞれの特徴を理解して選択することが大切です。
- 保証人・保証料を確認する: 保証基金を利用する場合は保証料が発生します。連帯保証人を立てる場合は、依頼する方の同意が必要です。
- 手数料を確認する: 振込手数料など、借入や返済にかかる諸費用も確認しておきましょう。
具体的な行動へのステップ
教育ローンや国の支援制度の検討を始めるにあたり、以下のステップで進めることが推奨されます。
- 必要な資金総額を見積もる: 入学金、授業料、その他費用を含め、大学4年間(またはそれ以上)で必要となる教育資金の目安を具体的に算出します。文部科学省や各大学のウェブサイトなどで情報を収集してください。
- 自己資金を確認する: これまでに準備してきた貯蓄などで、どれくらいの金額をまかなえるかを確認します。
- 奨学金・給付型支援制度を検討する: 返済不要な給付型奨学金や授業料減免制度、あるいは返済が必要な貸与型奨学金など、利用可能な制度を検討し、申請手続きを進めます(既存の記事も参考にしてください)。
- 不足額を把握する: 「必要な資金総額」から「自己資金」と「奨学金等でまかなえる金額」を差し引き、教育ローンなどで準備が必要な不足額を把握します。
- 国の教育ローンの利用条件を確認する: 日本政策金融公庫のウェブサイトなどで、世帯収入条件や融資限度額を確認し、利用可能か、不足額をまかなえるかを確認します。
- 民間の教育ローンと比較検討する: 国の教育ローンだけでは不足する場合や、より有利な条件がないかを確認するために、複数の民間金融機関の教育ローンを比較検討します。金利、融資限度額、返済条件などをしっかりと比較してください。
- 早めに申し込みを検討する: 入学金などの納付時期に間に合うよう、申し込みから融資までの期間を考慮して、余裕を持って手続きを始めることが重要です。
まとめ
大学進学にかかる教育資金の準備は、ご家庭にとって大きな負担となることがあります。奨学金や給付型支援制度と合わせて、教育ローンや国の教育資金に関する支援制度を賢く活用することが、資金計画を立てる上で重要な選択肢となります。
国の教育ローンは比較的低利で利用しやすく、民間の教育ローンは国のローンでは対応できない場合に選択肢となります。それぞれの特徴や利用条件をしっかりと理解し、ご家庭の状況や返済能力に合わせて最適な方法を選択することが大切です。
不安を感じることもあるかもしれませんが、一つずつ情報を収集し、計画的に準備を進めることで、お子様の進学をしっかりとサポートできるはずです。この記事が、皆様の教育資金計画の一助となれば幸いです。