大学受験の併願戦略で変わる教育費:合格後の入学金対策と費用を抑える方法
はじめに:大学受験と教育費の新たな課題
お子様が高校生になり、大学進学が現実のものとなるにつれて、教育資金に対する具体的な不安を感じる方も少なくないでしょう。特に、複数の大学を受験する「併願」を選択した場合、合格発表後の短期間にまとまった費用、特に入学金の支払いが必要となる可能性があり、家計への影響は無視できません。
この記事では、大学受験における併願が教育費にどのような影響を与えるのか、特に合格後の入学金に焦点を当てて解説します。また、これらの費用負担を軽減し、費用を抑えるための具体的な対策や考え方についてもご紹介します。
大学受験における併願に伴う主な費用
大学受験では、志望校への合格を確実にするため、複数の大学や学部を併願するのが一般的です。この併願戦略には、受験料、交通費、宿泊費といった直接的な受験期の費用に加え、合格発表後の重要な費用が伴います。
1. 受験料
受験する大学・学部ごとに受験料が発生します。共通テスト利用入試や一般選抜など、同じ大学でも方式によって料金が異なる場合もあります。複数の大学を併願すれば、その数だけ受験料がかさみます。私立大学の一般選抜の場合、1校あたり3万円~3万5千円程度が目安とされています。
2. 入学金
複数の大学に合格した場合、入学の権利を確保するために、まず「入学金」を期限内に納付する必要があります。これは、実際に入学するかどうかに関わらず、合格した大学に籍を置くための費用です。この入学金は、大学によって金額や納付期限が異なりますが、一般的に国立大学で28万円程度、公立大学で39万円程度(居住地による違いあり)、私立大学では20万円~30万円程度が目安となります。
問題となるのは、滑り止めとして受験した大学や、本命校の合否発表前に入学金納付期限が到来する大学に合格した場合です。入学金を納めなければ入学の権利は失われますが、もし本命校に合格した場合、既に納付した入学金は原則として返還されません。複数の大学に合格し、それぞれに入学金を納付せざるを得ない状況が発生すると、家計にとって大きな負担となります。
3. 入学手続き時納付金(授業料等)
入学金と同時に、または少し遅れて、前期分の授業料や施設設備費などが「入学手続き時納付金」として請求される場合があります。この金額は大学によって大きく異なり、数十万円から100万円を超えることもあります。複数の大学に合格し、入学金を納付した後に、さらにこの手続き時納付金の納付期限が次々と到来することも考慮に入れる必要があります。
併願に伴う費用負担を軽減するための対策
複数の大学に合格した場合の費用負担、特に入学金の二重払い・三重払いリスクは、計画的な対策によって軽減することが可能です。
1. 併願校の組み合わせを検討する
受験校を選ぶ段階で、各大学の合格発表日と入学金納付期限を確認し、これらのスケジュールを考慮に入れた併願戦略を立てることが重要です。
- 本命校の発表日を考慮する: 本命校の合格発表日よりも後に入学金納付期限が設定されている大学を滑り止めとして選ぶことができれば、本命校の結果を見てから入学金を納めるか判断できます。
- 納付期限の異なる大学を組み合わせる: 合格発表が早く、納付期限も早い大学(いわゆる「押さえ」の学校)の入学金は一旦納付する覚悟が必要な場合もありますが、その後の発表がある大学の納付期限が遅ければ、次の判断までの時間を稼げます。
- 共通テスト利用入試を活用する: 共通テスト利用入試は、一般選抜よりも合格発表や入学金納付期限が早い傾向があります。これを活用することで、早めに一つの合格を確保しつつ、その後の一般選抜の結果を待つことができます。ただし、納付期限には注意が必要です。
2. 入学金の一部延納・分割納付制度の確認
一部の私立大学では、経済的な負担を考慮し、入学金の納付期限を延期したり、分割での納付を認めたりする制度を設けている場合があります。特に、本命校の合否発表が入学金納付期限に間に合わない場合などに有効なことがあります。ただし、この制度がある大学は限られており、適用条件も設けられていますので、志望校の募集要項で事前に確認することが不可欠です。
3. 入学辞退による入学金返還制度の確認
原則として、一度納付した入学金は返還されないケースがほとんどです。しかし、一部の大学では、所定の手続きを行うことで、入学金以外の納付金(授業料、施設設備費など)が返還される制度があります。入学金そのものが返還されるケースは極めて稀ですが、入学手続き時納付金だけでも返還されるかどうかは、万が一に備えて確認しておく価値があります。募集要項の「入学辞退」「学費返還」に関する項目を必ず確認してください。返還が認められる場合でも、多くは大学が定める期日までの手続きが必要です。
4. 教育ローンや一時的な借り入れの検討
複数の大学への入学金納付が避けられない状況で、手元の資金が不足する場合は、教育ローンやその他の借り入れを検討することも一つの方法です。
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫): 金利が比較的低く、長期の返済が可能ですが、申込から融資実行まで時間がかかる場合があります。早めの情報収集と準備が必要です。
- 民間の教育ローン: 銀行などが提供しており、審査や融資実行が比較的早い場合があります。金利や条件は金融機関によって異なりますので、複数の商品を比較検討することが重要です。
- カードローンやフリーローン: 緊急性の高い場合に一時的な資金として利用することも考えられますが、教育ローンと比較して金利が高い傾向があるため、利用は慎重に検討し、返済計画をしっかり立てる必要があります。
これらの借り入れは、あくまで一時的な資金繰りのための選択肢であり、返済計画を含めて慎重に判断することが求められます。
まとめ:計画的な準備と情報収集が鍵
大学受験における併願は、お子様の進路選択の幅を広げる上で有効な戦略ですが、それに伴う教育費、特に合格後の入学金納付には計画的な備えが必要です。
受験校の選定段階から、各大学の合格発表日と入学金納付期限を確認し、費用の発生時期を見通した併願戦略を立てること。また、入学金の一部延納・分割納付制度や、入学辞退による学費返還制度の有無を募集要項で丁寧に確認することが、予期せぬ大きな費用負担を避けるために重要です。
もし複数の入学金納付が必要となり、資金が一時的に不足する場合は、国の教育ローンや民間の教育ローンなど、様々な選択肢を比較検討し、家計に合った方法を選ぶことが大切です。
大学受験は費用がかかるものですが、事前に情報を収集し、計画的に準備を進めることで、教育資金に関する不安を軽減し、お子様が安心して受験に臨める環境を整えることができるでしょう。